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ささいな日常の記録

金色のエイを探して

らばQ:海面を幻想的に埋めつくす黄金のエイの大移動 などでご存知の方もいるでしょう。
年に2回、大移動を行うというウシバナトビエイについて調べてみました。



らばQ のソースになっている Telegraph の Golden Ray photos of amazing mass migration や Mail Online の The great ocean migration... thousands of majestic stingrays swim to new seas(こちらの方は記事が若干くわしい)を読むと、このエイは "golden ray"、"cow nose ray"、"golden cow-nose ray" という名前のようです。
Wikipedia 英語版には、Golden cownose ray というページがあって、金色のエイの写真が載っています。
さらに、"External links" の所には、Telegraph の記事へのリンクもあります。
これで間違いないはずですが、記載されている項目があまりなく、別名が "hawkray" あるいは "pacific cownose ray" だという事はわかりますが、一番知りたい大移動についてはわかりません。
仕方がないので、学名で検索します。
Golden cownose ray の学名、Rhinoptera steindachneri で検索すると、スミソニアン熱帯研究所(Smithsonian Tropical Research Institute)の Shorefishes of the Tropical Eastern Pacific - Rhinoptera steindachneri のページがヒットしました。


あれ?
ここの記述を読んでも、集団を作るとはありますが、大移動に関する記載はありません。
しかも、生息域の地図を見ると南北アメリカの太平洋沿岸になっています。
大移動の写真が撮影されたのは、「ユカタン半島の北端」ですから大西洋です。
エイがパナマ運河を渡れない限り、太平洋のエイは大西洋にはいない筈です。


というわけで、一から検索をやり直した結果、この大移動するエイは golden なしの "Cownose ray" (Rhinoptera bonasus) なのでは?という結論に達しました。
Wikipedia の写真だととても金色に見えそうにはありませんが、フロリダの Museum of Natural History のサイトにある Cownose Ray のページには、赤っぽく写っている写真があります。
上に引用した写真で金色に見えるのは、海の色と光線の加減でしょうか。
そういう目で見てみると、写真の左上などに赤茶色の個体もいるようです。
何より、生息域の地図にフロリダからユカタン半島が含まれています。
そして、"Habitat" の項目に、大移動に関する記述がありました。
それによると、彼らは晩春に北に向けて移動し、晩秋に南に向けて移動するそうです。
集団の個体数は、南に向けて移動する時の方が多いようです。


最後に、英名と学名と和名で苦労したので、私が調べた範囲でまとめておきます。
いずれも、トビエイ目 のトビエイ科ウシバナトビエイ属です。


1. Cownose ray


2. Golden cownose ray


3. Flapnose ray


私の調査が正しければ、ですが、らばQの写真に写っているのはクロガネウシバナトビエイであり、ユカタン半島まで旅行して運良く大移動に遭遇できたとしても、金色のエイには見えないかもしれません。