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ささいな日常の記録

「均等分割ゲッター」は人力検索のグレーゾーン

人力検索はてな には、独自の用語がいくつもあります。
「ポイントゲッター」もそのひとつ。
簡単な定義は難しいんですが、「質問者のためを考えず、ポイントをゲットする事を主目的にした回答を行う回答者」という所でしょうか。
現状では無料質問もあるのですが、ポイントゲッターは無料質問にはまず回答しません。


さて、タイトルの「均等分割ゲッター」ですが、「ポイントゲッター」の一種です。
この記事を書くために、私が造語しました。
人力検索の質問は、質問を登録してから7日間が経過すると、自動終了します。
この時点で、質問登録時に設定したポイントは、各回答者に均等に分割されます。
ここで、6日間くらい経過した、自動終了しそうな質問を狙って回答する人たちがいます。
質問者が放置している可能性が高いので、回答の質には関係なく、均等分割されたポイントをゲットできる事になります。
(稀に傾斜配分されて、目論見が外れる事もありますが)
この「自動終了・均等分割を狙って回答するポイントゲッター」が「均等分割ゲッター」です。


ある質問(ちなみに私が回答した質問ではありません)で、あまりにもひどい「均等分割ゲッター」に遭遇したので、人力検索はてな - お問い合わせ から問い合わせてみました。
以下、私の問い合わせ文。(公開に当たって、個人名などは伏せてあります。)

自動終了直前の質問に「当たらずといえども遠からず」な回答を行ない、楽してポイントを稼ぐという手法は、人力検索で容認されているのでしょうか。
具体例をあげると、(注:具体的な id と質問 URL を削除しました)
回答履歴を精査していただければおわかりになると思いますが、ほぼ常習的に上記のような手法を用いているようです。


自動終了しそうな質問は、質問者さんが放置している可能性が高く、不十分な回答を行っても均等分割されたポイントを入手できる率が高いです。


ガイドライン上で明確に禁止されている行為ではないようですが、このような行為がまかり通るようだと、真面目に調査して回答する行為がバカらしくなるのは私だけではないでしょう。
はてなのご見解をお聞かせいただければ幸いです。


数日たって、はてなからお返事が来ました。(ダイアリーへの転載は、許可をいただいています)

こんにちは。はてなスタッフの○○です。
いつもはてなをご利用いただきありがとうございます。


お問い合わせいただきましたような質問については、回答の内容が明らかに不適切であると
いったものを発見次第、注意勧告や利用停止の対象としております。
しかし、一方で知識や表現力といった回答を行う能力には個人差があり、回答が質として
劣っていることを理由に何等かの措置をとることは困難です。


弊社としてそのような利用を推奨しているということは決してありませんが、
利用規約違反であるとして基準を設けることも難しい、いわばグレーゾーンであると
ご理解いただければと思います。


また、このように個人差のある領域において、有益な回答を行った方がより評価されるよう、
ポイントの配分や、回答拒否といった機能を設けております。


懸念いただいているように、いい加減な回答を行い、一時的には自動配分のポイントを
不当に手に入れることができたとしても、最終的には回答拒否および自動回答拒否
対象となり、新規の回答ができなくなっていく傾向にあります。


今後、このような評価を適切に行えるよう、さらに検討してまいりたいと思います。
ご不明の点、お気づきの点などおありの際にはお知らせください。
どうぞよろしくお願い申し上げます。


というわけで、はてなの公式見解として、「均等分割ゲッター」はグレーゾーンだそうです。
確かに、ガイドラインで明示したり、システムとして弾くのは難しいでしょう。


そもそも質問者は放置しているので、質問者が直接回答拒否する可能性は高くないと思われます。
被害を被った回答者が回答拒否リストを使用して自動回答拒否の対象にするという手段しかないわけですね。
間接回答拒否の功罪はいろいろ議論のある所ですが、少なくとも「均等分割ゲッター」を回答拒否リストに追加するのに罪悪感を覚える必要はないようです。


[2013年8月27日追記]
人力検索の某質問で、はてな運営からの返信に要した日数をより具体的に知りたい、というご要望がありましたので追記します。

私がウェブページから問い合わせしたのは2013年6月7日(金)でした。
返信のメールは6月12日(火)付けです。
間に土日が挟まってますから、翌々営業日ですね。
公開の許可を得るメールを6月13日(水)に送り、その返信は6月14日(木)に返ってきました。
こちらは翌営業日に返信されてます。
[追記おわり]

蜘蛛に擬態する蛾を調べてみた

一週間ほど前の id:chinjuh さんのツイートから。

ここ にある蛾の写真は本物でしょうか。学名でググると Siamusotima属はツトガ科だとありますが、どうもツトガっぽく見えないけどこういうのもアリなの?

https://twitter.com/chinjuh/status/336265340826832897

こんなPDF もみつけましたが、前のツイートの蛾と学名は一緒っぽいけど添付写真が別の蛾に見えたりするのは気の迷いでしょうか。

https://twitter.com/chinjuh/status/336266158657400832

最初のURLに幼虫がシダを食べるからフロリダで輸入するかもと書かれてるのも解せないです。幼虫に食害されたからってシダは減らないですよね。

https://twitter.com/chinjuh/status/336266597205409793

最初のURLにある三種類の写真も、なんとなく同じ素材から作ってるように見えなくもないし。ほんとにこんなクッキリと蜘蛛の足に見える蛾がタイ国にはいるのでしょうか。

https://twitter.com/chinjuh/status/336266990819893248

(引用に当たって、リンクをテキストに貼ってます)


出典がカラパイアですから、裏を取らないと信じられませんよね。
というわけで調べてみました。


まずは簡単な所から。
疑問その1「幼虫がシダを食べると何が嬉しいの?」


http://naldc.nal.usda.gov/download/1703/PDF にある学術論文のタイトルは、
Siamusotima aranea, a New Stem-Boring Musotimine (Lepidoptera: Crambidae) from Thailand Feeding on Lygodium flexuosum (Schizaeaceae)
ですが、この "Stem-Boring" ってのが大事なようです。
葉っぱを食べるんじゃなくて、柄に穴を開けて潜り込むらしい。
鉄砲虫みたいなものなんでしょう。


Prospects for biological control of Old World climbing fern
http://conference.ifas.ufl.edu/aw10/presentations/Wed/Session%20B/1635%20Boughton.pdf
は、Old World climbing fern(学名 Lygodium microphyllum、和名は「イリオモテシャミセンヅル」)の駆除に努力しているアメリカ合衆国農務省の人たちのレポートです。
葉っぱを食べる虫をいくつか試したけどイマイチだったようです。
で、問題の蛾を含めて、シダの柄に穴を開ける奴に注目しているみたいですね。


次に、疑問その2「ツトガっぽく見えないけどこういうのもアリなの?」
http://naldc.nal.usda.gov/download/1703/PDF で、Siamusotima は Musotima に最も似ている、と書かれています。
Siamusotima という名称も、siam(シャム:タイの古名)+ Musotima だそうです。
Musotima は日本語だと「シダメイガ亜科」ですね。
四国産蛾類図鑑 - ツトガ科 の下の方に、「シダメイガ亜科」の写真があります。
「タンザワシダメイガ」とかは、羽の形や触角のあたりも似ているかと。
というわけで、「こういうのもアリ」と考えます。


さて、疑問その3「PDF 文献の添付写真が別の蛾に見えたりするんだけど?」
chinjuh さん、さすがです。
気の迷いではないと思います。
PDF はモノクロ画像なので、私の感想は「似ているような似ていないような」でした。
ここは是非ともカラー写真で比較したい所。
で、見つけました。


画像元は Scientists Identify New Moth That Attacks Invasive Fern
アメリカ合衆国農務省のサイト、2005年8月17付の記事です。
フロリダ大学の人から提供された写真ですので、間違いはないでしょう。
PDF の添付写真とも一致します。


角度が違ってて恐縮ですが、2つ並べてみます。

(右の写真はトリミングしてます)
そもそも足模様の色が茶色と赤で違いますし、後翅の模様も違うっぽいです。
蜘蛛の体になる黒い部分の形も違ってますね。
これだけ違うとなると、個体差で片付けるのはちょっと気が引けます。


最後に、疑問その4「この写真は本物?」
カラパイアの記事からリンクされている元記事、Silly Moth, You Aren’t A Spider には、カラパイアと同じ写真が載ってますが、写真のクレジットは見当たりません。
au.businessinsider.com ではなく、www.businessinsider.com の同名の記事、Silly Moth, You Aren't A Spider の方にはクレジットが書かれています。
昆虫写真家の John Horstman さんの写真だそうです。


FlickrLygodium Spider Moth (Siamusotima aranea, Musotiminae, Crambidae) が大元ですね。
ただし、他の二枚の写真は Flickr にはアップロードされていないようです。
John Horstman さんは中国在住のオーストラリア人で、アマチュアの昆虫写真家です。
itchydogimages 名義で、SINOBUG という、中国近辺の昆虫写真のブログを書いています。
この写真も、タイではなく中国の雲南省で撮ったもののようです。
雲南省ベトナムラオスと接してますので、タイの昆虫がいてもおかしくはありませんが、タイと中国はそれなりに離れているので、亜種や変種の可能性も否定はできないでしょう。


なお、写真がフェイクという可能性も考えましたが、3万人のフォロワー がいて精力的に虫写真を撮り続けている人が、なぜフェイクの写真を公開しなければならないのか、という点で動機が見つかりませんでした。