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ささいな日常の記録

回答者の正義

alpinix さんの 第二百九十二夜 人力検索の正義の話をしよう - AlpinicNight〜検索千夜一夜〜 を興味深くウォッチしていたのですが、1ヶ月たっても先に進まないので(^^;
勝手に続きを書いてみます。
私はどちらかと言えば回答者であり、回答者目線から感じた事が基本になりますので、alpinix さんとはまた違った視点になるであろう事をお断りしておきます。


まず、「回答者の正義」とは何でしょう。
「質問に対して正解を答える」に尽きるというのは言うまでもありません。
では、「正解」とは?
数学の問題のように、正解が一つしかないものもあるでしょう。
国語の読解は、回答者の数だけ正解がある、というのもまれではありません。
もう少し具体的に言えば、「ここはどこでしょうシリーズ」は前者であり、「XXのお勧めを教えてください」系の質問は後者になります。
そして、どちらの質問が多いかと言えば、圧倒的に後者の方が多いのです。


さて、正解が一つとは限らない場合に、回答者が取る態度は大きく二つあると思われます。

  1. 考えられる限りの(あるいは検索できる限りの)解を探した上で、ベストのものを回答する(あるいは有力なものを複数列挙する)
  2. 何でも良いから質問の条件に合致したものをとりあえず答える

どちらも「正解を出す」という観点からは正義に合致していますが、一般常識的には前者の方が「良回答者」と判断されるでしょう。
しかし、1. の方式を取れるかどうかは質問者に依存し、リスクの高い博打なのです。
博打ならハイリターンが期待できますが、人力検索の場合はまず期待できません。
均等配分でわずかでもポイントが入ればまだ良い方です。
時間をかけて回答を練っているうちに質問者が興味を失って、投稿した回答をオープンしてもくれない、という事さえあります。(経験者談)
従って、対費用効果(対努力効果?)を考えるまでもなく、2. の方式が安心・安全なわけです。


私の知る限り、2. の方式は規約違反でも禁止事項でもありません。
はてな利用規約 の第6条4には、人力検索での禁止事項が明記されています。

4. ユーザーは、本サービスの「人力検索」を利用するに際し、以下のような行為を行ってはなりません。

  1. (略)
  2. 繰り返し類似した質問を登録したり、意味不明な表現を用いた質問を登録する行為、質問の意図から明らかに反れた回答、虚偽の回答、広告宣伝目的の回答、不快感を与える回答を行う行為

(後略。強調引用者)


質問の意図にある程度そってさえいれば、回答の質の良し悪しは問われないのです。
回答の質を評価するのは(ポイントを支払う)質問者の特権であり、その特権には均等配分する事も含まれます。
ですから、苦労して書いた回答に均等配分でろくなポイントが付かなかったとしても、それは均等配分する可能性のある質問者に回答した回答者が悪い、という仕様なのです。
逆に言えば、人力検索で良回答者を満足させるモチベーションは、質問者が、主だった回答には必ずコメントを付け、質問を手動終了した上で、ポイントを傾斜配分して良回答には高ポイントを与え(余裕があればボーナスポイントを出し)、かつベストの回答にはいるか賞をつける、という性善説に基づいているわけです。
しかし、「質問者の正義」は得た回答に対してポイントを支払う事であり、回答者の評価をする義務はありません。


この性善説の前提が崩れたのはいつ頃なのでしょうか。
私が見た限りでは、昨日今日の話ではありません。

質問と回答の質が低すぎる。最近ネタにしか使えていません。

1)質問するたびに「googleの検索結果張っただけはカンベン」とか書かねばならない
2)回答も脊髄反射的なクソ回答が増えている
 2-a)質問者が得られた回答を精査しないで無思慮にポイント配分するから
   ポイント目当ての輩が跋扈する


運営からの 回答者ランキングについてのアンケート で見つけた コメント です。
日付は 2005-11-01 ですから5年近く前のものになりますが、現在のものと言われても違和感はないと思います。
つまりこれは構造的なものなのです。
はてなの創成期から5年くらいの間は、性善説に基づいた枠組みが問題なく動作していたのでしょう。


話を現在に戻します。
以上のような障害があるにもかかわらず、良質の回答を行おうという回答者は確かに存在します。
自分の検索能力を誇示するため、あるいは他の回答者より多いポイントを獲得して優越感にひたるため、という見方もありえますが、誇示したからと言って賞賛してくれる人がいるという保障はなく、また人力で得られるポイントは貨幣価値で言えば数十円の微々たるものです。
ここで「回答者の正義」の登場です。
ポイントの多寡は度外視して、「より良い回答」を提供する事に「正義」を見いだしている、という解釈はできないでしょうか。
alpinix さんの「金では買えない倫理や何か高貴なものが世の中には存在し、現代の正義はそれをもっているべきである」につながる解釈です。
「自分は正しい事をしている」という自負がなければ、人力検索で良回答者であり続けるというのは難しいでしょう。
いや、いかに自負を持っていても、現状の人力検索でモチベーションをキープするのは困難なのかもしれません。
いるか賞の数による 歴代回答ランキング にリストアップされている回答者の方々のうち、現役を継続されている人は20人の中で半数にも満たない、という事がそれを証明していると思います。