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Google Answers あれこれ - Part 4. 「1ガロンの石油に恐竜は何匹いるのか」

GigazineGoogleはなぜ「全自動化」できないサービスでは負けるのか?〜前編〜 で、

「人類の叡智の結晶」と絶賛された伝説的回答

と紹介された、「1ガロンの石油に恐竜は何匹いるのか」
Google Answers: Carbon content of fossil fuels and dinosaurs
を和訳してみます。
Gigazine の形容詞「人類の叡智の結晶」は Wikipedia 風に言えば [要出典] ですが、Google 公式ブログの Adieu to Google Answers(さよなら、Google Answers)でも取り上げられている事から、Google Answers 史上最高の Q&A の一つであった事には間違いありません。




質問

表題:化石燃料と恐竜の炭素含有量
カテゴリー:科学 > 化学
質問者:doog-ga
料金:$10.00
投稿日:2002年4月25日 12:11
終了日:2002年5月25日 12:11
質問ID:6021


1ガロンのガソリンの中には恐竜は何匹いるのでしょう?


アメリカ人が好きな化石燃料であるガソリンに含まれる炭素は、多くが植物由来だとは思いますが、再生産ができないという事からすると、恐竜由来と考えた方がわかりやすいです。


そこで、大人のティラノザウルスに含まれる炭素原子の数を推定できたとして、それに相当する 92オクタンのガソリン(訳注:アメリカでは ハイオクガソリン の部類に入る)はどれくらいの量になるのでしょうか? 逆に、ガソリン1ガロンの炭素から、何匹の恐竜を再構築できるのでしょうか?


回答

表題:Re: 化石燃料と恐竜の炭素含有量
回答者:drdavid-ga 2002年4月25日 15:49
評価:★★★★★


一匹のティラノザウルスに含まれる炭素の量は、ガソリン 460ガロン(訳注:約1748リットル)と等しい、というのがお答えです。
(1ガロンのガソリンからは、ティラノザウルスの1/460ができます)


御存知とは思いますが、ガソリンは精油所で原油から精製されます。原油は、何百万年もかけて地下に貯蔵されたと考えられており、そこから汲み上げられているのです。油は再生産できない資源と考えられていて、生成と蓄積に何百万年もかかったものを、我々は数百年で汲み出しています。そして、おっしゃるように、原油の元になっているのは、動物由来のものではなく、おそらくプランクトンが主であろう、と考えられています。7千万年前のティラノザウルスから 92オクタンのガソリンへの変換過程は、言わば不可能ではないけれどストレートにはできない、という所でしょう。化石燃料の起源に関する一般的な議論は、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の地質学講座のサイトにある、"Geology 100" の "Topic #14 Power from the Earth - Fossil Fuel"(地球からのパワー - 化石燃料)で読めます。


しかし、変換プロセスにおける全ての非効率性を無視して、ティラノザウルスの全炭素原子をガソリンに変換できると考えてみましょう。大人のティラノザウルスの重量を記載しているいくつかのサイトを見た所、推定重量は5から8トンの間です(1トンが英トンか米トンか、それともメートル式かは悩んでも仕方ありません)。約6トン(6000キログラム)という所が妥当な線でしょう。


://www.google.com/search?q=tyrannosaurus+weight


でググれば、重量を推定しているサイトがいくつも見つかります。もちろん、この6000キログラムの多くは水でしょう。このうちどれくらいが炭素かを正確に推測するところで、ちょっと詰まりました。John Kimball の生物学のテキストにある "Carbon Cycle"(炭素サイクル)を見ると、生体のおおむね18%が炭素であると推定できる、という事がわかります。これは、多少の誤差はあっても、恐竜にも適用できるでしょう。従って、一匹のティラノザウルスは、約1100キログラムの炭素を含んでいます。


さて、92オクタンのガソリンの炭素量も必要です。ガソリンが100%イソオクタン (C8H18) であったと仮定すると(例えば、"Fuel Chemistry" を参照)、ガソリン重量の84%が炭素になります。ガソリンの密度はおよそ .75 g/cc です(例えば、"MSDS HyperGlossary" を参照)。
(訳注:"Fuel Chemistry" は原文のリンクが切れていたので、リンクしていたと思われるページへのリンクに変更しました)


1米ガロンは 3785ccです(オンラインの単位変換サイト、Online Conversion を使用しました)。
従って、1ガロンのガソリンに含まれる炭素の量は、3785 x .75 x .84 / 1000 = 2.38 kg になります。


これを、我々の平均的ティラノザウルスの炭素総量で割ると、一匹の恐竜から 460米ガロンのガソリンを得る事ができる、という事になります。炭素が100%変換できるとして、の話ですが。


以下の Google 検索は役に立つでしょう:


://www.google.com/search?q=origin+fossil+fuel
://www.google.com/search?q=tyrannosaurus+weight
://www.google.com/search?q=carbon+cycle
://www.google.com/search?q=specific+gravity+gasoline
://www.google.com/search?q=unit+conversion


doog-ga によるこの回答の評価:★★★★★


優秀な回答です。綿密でありながら簡潔。権威あるソースからの引用(とリンク)によって、分析の各ステップで豊富な参考知識が得られました。


そして、回答に要したのが数時間。素晴らしいです!




原文を見ていただければおわかりになりますが、回答部分のリンクはシステムの制限からか URL のままになっています。
訳出に当たって、読みやすさを重視して語句にリンクを貼る形式に直しました。


何を隠そう、この「Google Answers あれこれ」を始めるきっかけになったのは、この Q&A を翻訳してみたい、という所からでした。
拙訳ではありますが、お楽しみいただければ幸いです。




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