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ささいな日常の記録

モーターが回るのはなぜか

Kityo さんの質問、電気式のモーターが回るのは何故なのか に対するお答えです。
前の質問 における回答へのコメントから推察すると、一番わかりにくいのは、

「釣り合って止まってしまうのではないか?」とか「ちょうど【━】的な状態から電気を流したら回り始めないのではないか…?」などと思ってしまう

というところでしょう。
回答からリンクされている モーターのしくみ などを見ると、なおさらです。


この点を解明するには、実は電気と磁気の表面的な理解だけでは不可能なのです。
理科の教科書には出てこない理論を使う必要があります。
残念ながら、私が検索した限りでは、日本語でこの理論をきちんと説明したページはありませんでした。
仕方がないので、少し長くなりますが、まず理論の概略を英文から翻訳します。
なお、この理論は、英国車のユーザーによって最初に発見されたものと思われます。




   電気回路のスモーク理論


回路が正常に動作する大前提として、陰イオンの移動が必要ですが、これは目には見えるものの幽霊のような、ある物質の蓄積によって行なわれます。その物質とは「スモーク」です。スモークが存在する事によって、電気回路が動作するのです。電気のシステムから煙が立ち昇った後は回路が動作しない、という事実を経験すれば、これが正しいという事を理解できるでしょう。これは様々な実験で繰り返し実証されています。


一例を上げましょう。ある電気部品(例えば、そう、ルーカス社の電圧調整器)からスモークが出た場合、その部品はもはや動作しません。ワイヤーハーネスの機能は、あるデバイスから別のデバイスにスモークを搬送する事です。ワイヤーハーネスから「リークが生じ」て、全システムからスモークがなくなったら、何も動かなくなります。英国車のスターターモーターはずっと嫌われてきましたが、これは主として消費するスモークの量が多く、非常に多くの電線を必要とするからです。


ルーカス社の部品は、ボッシュ社や一般的な日本製の電気部品に比べて電気的なリークを起こしやすいと言われています。この点について専門家は、ルーカス社はイギリスの会社であり、イギリスの物はおしなべてリークを起こす、と指摘しています。イギリス製のエンジンはオイルを漏らし、ショックアブソーバーや水圧シリンダーやディスクブレーキは液漏れを起こし、イギリス製のタイヤはパンクし、イギリスの国防機関は機密を漏らします。従って、当然の帰結として、イギリスの電気部品はスモークをリークするのです。


原文:The Smoke Theory of Electric Circuits
訳注:英国車に詳しい方ならご存知でしょうが、ルーカス社はイギリスの自動車および飛行機部品メーカーです。創業1872年(明治5年)の老舗です。Lucas Industries 参照。なお、記事によっては "Electrical Theory by Joseph Lucas" となっていますが、Joseph Lucas はルーカス社の創業者です。




さて、スモーク理論をご理解いただいたところで、本題に戻ります。


モーターに電流を流すと、電線の中にあるスモークにプレッシャーがかかります。
これを専門用語で、電圧と呼びます。
さらに、コイル状の電線によって磁場も発生し、スモーク粒子のブラウン運動に偏在化が生じます。
スモークにも質量がありますから、質量の偏在によって重力の影響を受け、釣り合わずに回転しだすのです。


モーターの電磁石部分がコイルになっているのは磁場を発生させるためだけではなく、バランスを失わせるだけのスモークを保持しなければならないので、できるだけ多量の電線が必要、という理由もあるのです。
電流を流さなければスモークの状態は一定ですから、釣り合いを保って停止するわけです。


とまあ、詳しく説明すると難しいかもしれないのですが、スモーク理論からすれば、ご質問へのお答えは極めてシンプルです。


質問:電気式のモーターが回るのは何故なのか?
回答:煙が出ていないから。


以上、ご参考になれば幸いです。




余談
スモーク理論は、コンピューター業界にも脈々と受け継がれています。
ハードウェアの試作品やソフトのプロトタイプをテストするときに、「スモークテスト」と呼ぶのはスモーク理論に敬意を表しての事です。
Wikipedia 英語版の Smoke testing をご参照下さい。
単なる smoke ではなく、Magic smoke や blue smoke と呼ばれる事もあるようです。